6R15ムーブメントを搭載する時計SARB033などへ6R15の代わりにNH35(4R35)を搭載することは性能的にダウングレードになるカスタムでメーカー保証もなくなりメリットはありません。
ただし、この2つのムーブメントは形状が似ているので楽に載せ換えが出来そうな様子。
はたしてNH35は代用品として6R15搭載モデルへ組み込むことが出来るのか試してみることにしました。
実作業の記事は次のリンクにあります↓
SARB033(035)固有の部品
SEIKOメカニカルSARB033へのNH35搭載を試みる手順として、まずSARB033を分解しこの機種だけに使われる固有の部品(パーツ)がないか調べることにします。
NH35を6R15搭載モデルで使用するためには、NH35がその外装部品(ケース)に適合することと、その時計だけに使用されるモデル固有のパーツがあればそれにも適合することが必要です。
金属スペーサー
SARB033の裏蓋を開けると目立つのがムーブメントを囲むように設置されている金属のスペーサーです。
この金属スペーサー(正式な名称は不明)は6R15-00C1(00C0も同じ?)SARB033(035)のケース専用のパーツであると思われます。
同じ6R15を採用しているセイコーの時計でもケースや文字盤のサイズが違うモデルならこうした部品は異なるのではないかと思われます。
機止め板(側止板)
SARB033(035)では、上の金属スペーサーと文字盤、ムーブメントを一括して固定するための機止め板という部品が使われています。
側止板と呼ばれる場合もあるようですが、SEIKOの場合どちらの名称が正解かは分かりません。
この部品も、ケースサイズによっては異なる大きさの物が使用されることでしょう。
文字盤受けリング
こちらは、もしかしたらSARB033用というより6R15で共通して使用できる部品なのかもしれませんが、検証できる環境を整えていない(他のモデルを分解するのが勿体ない)ので分かりません。
以上の3つがSARB033(035)で使用される固有の部品であることが分かりました。
このことから、SARB033のケース(竜頭、裏蓋付き)と文字盤が手には入ったとして、更に金属スペーサーの代替パーツと側止板(固定ネジ2本含む)、文字盤受けリングが揃えば、NH35(4R35)で「なんちゃってSARB033」な時計を完成することができるのではないかという期待が沸くことになります。
とは言っても、SARBのみならず6R15系のケースのみが中古で出品されることが極めて希ではあって、現実的には不動のジャンク品を入手した場合にしか当てはまらない話ではあります。
NH35と6R15の形状比較
NH35ムーブメントを6R15の代替と考えた場合に、逃してはならない形状の違いが一つありました。
画像の右下に位置する機止め板(側止板)取り付け用のスペースが、6R15の場合2つ並んでいますがNH35では一つ足りなくて1カ所のみです。
ターゲットのSARB033に用いる金属スペーサーでは、このNH35にはないねじ穴を用いて機止め板を使い機械類をケースに固定しています。
この仕様上異なる機止板の位置はNH35を組み込む際に解決しなければならない課題です。
6R15にはNH35との形状の違いのほかに、文字盤の干支足を固定するためのネジが挿入されていました。
今回調達したNH35の場合、樹脂スペーサーへ干支足を差し込んで固定することを想定しているので、このネジは付属していません。
SARB033のケースへNH35を載せる
ケースにムーブメントを固定するにあたって6R15とNH35で異なる側止板(機止め板)の設置位置が問題となります。
※以下の検証でNH35に取り付けたSARB035の白文字盤は、たまたま干支足の配置がNH35に適合する仕様でした。SARB033、035の文字盤の多くでは干支足の配置がNH35に適合しないことが想定され、その場合、加工なしでNH35ムーブメントへの載せ替えはできません。
NH35ムーブメントを設置後に既存の金属スペーサーを入れ元通りに組み立てようとすると、巻真の横に入る側止板は6R15の場合と同じく設置可能ですが、もう片方の側止板はムーブメント側の位置がずれていて設置できません(一部6R15Dを使ったモデルではNH35と同じ位置でケースへ固定されている)。
取り付けができない側止板を設置せずそのまま裏蓋を閉じてみましたが裏蓋をねじ込むことでこの金属スペーサーが固定されることもなく、中の機械がカタカタ動いて安定しません。
このままの状態では時計としての実用は不可能です。腕に付けたままローターを回転させるような動作はできない状況です。
時計を日常的に使用可能に仕上げるためには、金属スペーサーをNH35用に加工するか外注に出して制作してもらうしかありません。
とりあえず金属スペーサー抜きの状態でムーブメントを固定してみました。
機止め板を取り外す際に表裏の向きを確認していませんでしたが、おそらく折り曲げ加工の山側の盛り上がった側を文字盤へ向け、逆に凹んでいる面を裏蓋側へ向けて設置するとケースにムーブメントが(金属スペーサーを間に入れればそれも)固定される仕組みのようです。
安定した運用は不可能?
文字盤の固定と針の載せ替えについては画像を掲載していませんが、SARB033(035)でNH35を使用する場合、一部の文字盤を除いて加工が必要になります。
それから、先に書いたように干支足を固定するためのネジはNH35には付属しないので信頼性には欠けることになります。
今回は金属スペーサー抜きという中途半端な仕上がりになってしまいましたが、この状態でも強い衝撃が加わることがなければしばらくの間は時計としての機能は果たしてくれることでしょう。
この先、実運用が可能な状態へ完成させるには純正品の代わりになる 金属枠の調達は不可避と言えます。
ただし、金属加工を外注に出す費用プラスNH35代でNE15(6R15相当品)が買えてしまうのではという疑問と、メーカーに修理に出すことができない時計になってしまう事実を考えると無駄な試みになりそうです。
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