隙間時間で練習、機械式腕時計のオーバーホール【NH35:セイコー4R35】

歯車の並び

自分だけのオリジナルな時計を組み立ててしまうようなコアな時計ファンの間では有名なNH35ムーブメントはオーバーホールの練習用としても使えます。

NH35(4R35)がオーバーホールの練習に向いているのは、慣れない細かな作業でパーツの破損や紛失などといったトラブルに見舞われたとき部品取り用の代替品を調達しやすいことと、6R15や7S26など部分的に同じ機構を持つムーブメントの技術情報を参考にできる点です。

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NH35A(4R35B)のオーバーホール手順

時計から外したNH35A

当サイトでは、NH35A(4R35B)のオーバーホール手順について次の一覧の通り複数ページにわたって解説しています。

NH35A(4R35B)オーバーホールの流れ

NH35Aのオーバーホールに向けてカレンダー(日車)を取り外す

NH35Aでメインの駆動系パーツを分解【趣味で楽しむ時計オーバーホール】

NH35A分解の最終工程【巻き真周りのパーツを取り外す】

趣味で楽しむ時計のオーバーホール4R35B(NH35A):組み立て編ステップ1

焦らず地道に進める時計のオーバーホール4R35B(NH35A):組み立て編ステップ2

ここまで出来たら動いてほしい時計のオーバーホール4R35B(NH35A):組み立て編ステップ3

以上のページは分解工程の解説にはNH35A、組み立ての工程では4R35Bを使用していてこの二つの機械は全く同じ仕様ではないものの共通点が非常に多いことがよく分かると思います。

また当サイト内にはNH35Aと機械的な構造がほぼ共通である(スペックは異なる)6R15Cのオーバーホールについても画像入りで解説したページを設けていますが、ここでのNH35Aを使ったオーバーホールは隙間時間を使って繰り返し実践可能な練習を想定したペースや流れになっています。

動画サイトなどにある時計メンテナンス関連の既出の情報はとても参考になりますが、その分自分も簡単に分解や組み立てができるのではと思ってしまいがちで、その結果、初心者には不相応な作業スピードや成果を期待してしまうことにもなりかねません。

時計のメンテナンスで、なかなか期待していた成果が出ずに戸惑いが生じてしまったら、一度自分なりの作業の進め方や段取りについて工夫してみることも必要かと思われます。

ここで紹介した工程順にとらわれることなく自分なりのペースに合わせた形で区切りを設け技術の習得に励んでみるのもよいでしょう。

NH35のオーバーホールは無駄な試みか?

ローターを外したNH35A

もう何年か前のことでNH35Aが出回り始めた頃の話ですが、時計ファンにとってNH35は7S26の代替ムーブメントとして使われることが多かったようです。

当時言われていたのは、セイコー5の修理や交換目的で7S26の新しい機械を探すなら35ドルで新品のNH35に入れ替えたほうが効率が良いということ。

この考えは今でも4R35(36)を搭載した時計に当てはめて言うことができて、使い込んだ4R35(36)を積んだ時計をメーカーや時計店にオーバーホールに出すならNH35(36)に入れ替えてしまったほうがコスパが良いということになります。当然ケースからの機械の取り出しや文字盤と針の付け替えが自分でできることが条件です(実施するとメーカーのサービスは受けられなくなります)。

外した歯車とコハゼ

しかし、時計好きの中でもやはり極一部になるとは思いますが、私のように一度バラしたあと自分で組み上げた時計の機械に他では体験できない達成感を覚えるような人にとっては、製品版の高価なムーブメントを扱う場合と違って扱いに緊張感が少なくて済むNH35の価値は格別なものになります。

もし当てはまるような方がいれば、その人にとってNH35はある意味至高の機械式ムーブメントであって、壊れたら入れ替えるというよりメンテナンスを繰り返してなんぼの機械ということになるでしょう。

とは言え機械式時計のオーバーホールは簡単ではなく、練習を繰り返す中で自分が満足できる成功体験を順調に積み重ねていけることはとても重要で、その結果、運よく技術の習得につなげることができればNH35は単なる格安ムーブメントではなく夢のある機械と位置付けることができそうです。

機械式腕時計のオーバーホール