先に記事に書いていたとおり、パソコン用のタイムグラファーソフトウェアを利用するためにヘッドホンアンプを試してみたところ上手く計測できませんでした。
使えなかったことには納得しなくてはなりませんが、小型で見た目もおもしろガジェットなこのアンプの使い道が他にありません。
この際、使えなかった原因をとことん追求してみることにします。
※今回の検証は、趣味の範囲のものですので当記事に記載の内容を推奨するものではありません。PC本体や時計の損傷、不具合など危険があるかもしれませんので真似はしないで下さい。
ヘッドホンアンプはびぶ朗に不向き
組み立てキットのヘッドホンアンプが、時計ファンなら知るであろうアプリケーションソフト「びぶ朗」で使用できないのは音量の増幅が足りていないことが原因であると推測します。
ヘッドホンアンプは、音質をアップさせるのが目的の製品で音量そのものの増幅には長けていません。
アンプについて書いた記事:時計の趣味と電子工作
もちろんマイクに用いた圧電素子の感度も係わるかもしれませんが、それを補うのがアンプの役目でもあります。
そんな訳で現在所有している小型アンプは、電子回路のオブジェになりつつありますが処分する前に本当に音量が原因であることを確かめておくことにします。
そこで、自分が持っているムーブメントの中で一番チクタク音が大きいETA6497で再度歩度の測定に挑戦してみることにしました。
アプリの使い方「キャリブレーション」
まず使用するアプリ「びぶ朗」の使い方に間違いがないか、あらためて調べてみようと思いましたが、情報があまり多くありません。
とくに重要なキャリブレーションの仕方が全く分かりません。
Web上の限られた情報から得られた仮説は次の通り。
後は時計をマイクに設置して、「しきい値」(緑のライン)の調整を行えば歩度の計測が可能になるはずです(ハズですが・・)。
いわゆるノイズレベルのキャリブレーションとは、マイクを通して常時入力されるノイズにマスクをかけるための処置で、時計を載せない状態で継続されるノイズの直ぐ上に青の横線を持ってくるということ(合ってる?)。
ステレオであることが悪影響
ここまでの段取りで、時計の歩度が計測できているハズでしたが計測値のグラフが安定せずAUTOでの振動数すら確定しない状況。
今回、測定に使用している機械はETA6497(ユニタス)なので流石に増幅不足が原因ではないでしょう。
最終的にもっと音の高い(正直うるさいほどの)「TIMEX」を持ち出して計測することにします。振動数はAUTOではなく1bpsに固定。
これで測定できなければ何かほかに原因があります。
TIMEXを圧電素子に当てて赤の振動の表示を見ると、クォーツ時計は1秒に1回の音で十分なのに、その1回の音が被っているのが分かりました。
ステレオアンプであることが災いしたようです。
アンプの左右に分けて二つある回路からのアウトプットが、同時ではなく片方僅かに遅れていて、しかも左右で利得が均等ではなく別の振動としてアウトプットしています。
PC側がこれをしっかり拾ってしまうようです
クォーツなのに微妙に違うLR音が合わさり1秒おきに2回づつ検出されていた状態でした。
モノラルであれば正確にクォーツの1振動を記録できたことでしょう。
ステレオ回路のモノラル化
モノラル化というより、片方の回路を無効にしてしまえば音が重なる現象は回避できそうです。
そこで取り出してきたのはハンダ吸い取り器。あまり出番がないモノなので使い慣れませんがこれでアウトプットジャックの端子の一つを浮かせることにします。
組立時は後で外すことなど考えていないので、ガッチリついていて半田吸い取り器でも上手い具合にハンダが除去し切れません。
結果的に、ここでも役に立ったのはカッターナイフで最終的には回路を切り離しました。
測定できたグラフ
二重に拾っていた振動音を修正できたことで、今度はETA6497でなんとか歩度の測定に成功しました。
組立直後のETA2824も試してみましたが、こちらは音が低いと言うより肝心の振動が安定せずバラツキが目立ち測定できませんでした。(自信がないので、そういうことにしておきます)
ETA6497もギリギリ測定が可能であったという感じで、アンプの利得にあわせて時計の機械そのものも、しっかり分解清掃できていることが必要ですね。
検証結果のまとめ
ヘッドホンアンプを使っての歩度測定の検証は以上ですが、やはりタイムグラファーは完成品を調達したほうが精神衛生上は楽になれます。
こうした工夫や試行錯誤が楽しいという方もいるかもしれませんが個人差は大きいでしょう。
さて、今回のまとめですが、PCのタイムグラファーを利用するためには、「質の良いマイクを使いノイズ対策をする。アンプはモノラルアンプを選び、測定の対象となる機械を安定させるための技術を磨く」こんなところでしょうか。
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