4R35(NH35)用の金属スペーサーを外注制作する

アナログ腕時計

6R15を搭載した腕時計のムーブメントをNH35(4R35)へダウングレードさせたいときにネックとなるのが、ケースとムーブメントの固定に使われている金属スペーサーの形状がNH35に適合しないことです。

この金属スペーサーはなくてもムーブメントは固定できますが、構造的に不安定な状態になるのと他にも気づかないところで問題が生じそうです。

なお、時計のカスタムはメーカーの保証やアフターサービスが受けられなくなるほか精度の低下や故障の原因になります。当サイトを参考にして行った作業については一切責任を負えませんのでご注意ください。

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金属スペーサーの仕様を変更し外注

ムーブメントをNH35に交換したところでパワーリザーブが短くなるだけであまりメリットはないのが正直なところですが、実際にNH35が安定して搭載可能なのかというところを試してみることにしました。

純正のスペーサーとカスタム部品

そこで課題となる金属スペーサーを仕様変更してムーブメントの固定に使ってみることにします。

仕様変更と言っても、そう難しいことはせずスペーサーの役割をしている枠を機止め板が入る凹みに合わせた平らな座金状の部品に置き換えてしまおうというわけです。

もともとアマチュア程度の機械製図の知識があったので、フリーのCADで平座金の図面を制作しPDFに変換。これを元に金属加工を請け負っている会社へ問い合わせてみることにしました。

問い合わせ1件目で断られる

最初に問い合わせてみた会社は旋盤などを使って機械部品を作っている会社でした。

検索した結果出てきたサイトの問い合わせフォームから図面を添付して制作が可能か問い合わせたところ、返ってきた返信メールには「厚みが足りないので当社では作れません」といった内容の返事です。

図面に入れた平座金の厚みの寸法は1mmに満たないもの、純正部品の機止め板を固定する場所の厚みは同様に1mmに満たないため、この薄さは必要になります。

旋盤を使った機械工作では技術的に無理で考えが甘かったようです。他をあたってみることにしました。

受注可能な2件目へ制作を依頼

続いて問い合わせ先を、サイズの小さな機械部品の加工を請け負っているような会社を検索してみたところカメラの部品なんかでワンオフ制作を請け負っているような会社を見つけたので問い合わせしてみることにしました。

結果は制作可能とのことでしたが、見積の金額が平座金のそれではありません。

SEIKO5が買えるような金額です。

サイズが小さいことと、やや余計な知識があったせいで仕上がりの精度を細かく指定したことが金額に影響したかもしれません。

制作可能と知ったこの時点で仕様は訂正せず発注することにしました。

納品された座金状の金属枠

発注後前に予め納期が数週間かかるとの話を聞いていたので外注した平座金が完成するのを待つことにします。

納品された金属スペーサー

そして、予定されていた期日通りに発送の連絡を受け届いた部品が画像のものです。

素材は錆が出ないようステンレスを使っています。

詳しくは分かりませんが、この部品はフライス盤や旋盤ではなく別な精密機械専用の工作機械を使った工法で作られたそうです。

SARBのケースにNH35を固定

外注制作で出来上がった金属スペーサーを使いSARB035(033)のケースへNH35を固定してみます。

使用したケースは風防のガラスパッキンを白に交換してあるので、033 ではなく035仕様になっています。(SARBシリーズの文字盤は干支足の場所がNH35に適合しないため無加工では取り付け不可です)

スペーサー無しで固定したNH35

当初スペーサー無しで機止め板だけでムーブメントを固定していた画像です。

ムーブメントの周りが空いていて機械が不安定に置かれている状況。

作成したスペーサーとケース

ここへ外注制作した金属枠を入れます。

竜頭を引き抜き機止板を一旦外してしまいます。

スペーサーを入れ竜頭を戻す

新しいスペーサーを入れ竜頭を元に戻してみて巻き芯と干渉しないか確認します。

本来、純正の金属スペーサーの付け外しには巻真を抜く必要がなく純正部品には巻真が通る凹みが存在します。

今回はカスタム費用を押さえるため設計上凹みは一切採用していません。

凹み無しの枠を設置して巻真と接触しないかが一番の心配どころでした。

結果は竜頭を元に戻しても巻真との干渉はなく時刻の調整や手巻きがスムーズに行えています。

ケースに機止板を設置

新しいスペーサーは外径、内径ともにピッタリで問題ない様子。

正直、隙間が少なすぎたほどでケースとムーブメントの間に入れるのに手こずりました。

あとは機止め板を元に戻し裏蓋を締めて完成です。

作業が完了したSARB035

裏蓋を閉じてしまえば、外見は秒針がブルーにカスタムされている程度で普通のSARB035とほぼ変わりはありません。

変更した金属スペーサーは厚みがないため重量的なバランスには狂いが生じているので、その影響がどうでるかはしばらく使ってみないと分からないところでしょう。

その分軽量化されているとは思いますが使い心地に変わりはありません。

今回のSARB033のカスタムはこれで全て完了になりますが、余程の時計好きでない限り違いがわかりにくいです。自己満足というか自分仕様の機械式時計を身につける喜びは大いに達成できています。

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