手巻きの感触にムラが生じたムーブメントの修理【NH35:SARB035】

角穴車を押さえる 修理
角穴車の穴が香箱芯に噛み合わない

新品のNH35(4R35同等品)へムーブメントを変更済みのSARB035ですが手巻きのときに指に感じるジリジリ感にムラが生じる感覚があります。

竜頭を数回転するごとに歯車に強く負担がかかるタイミングがある様子。この不快な感触を治すことにしました。

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原因は角穴車の取り付け不良

この時計に使用したNH35は、新品で購入したものの取り付け前に巻真を抜いた状態で手元を滑らせてしまい卓上に落下させるという扱いの不備がありました。

NH35を載せたSARB035

NH35仕様に変更されたSARB035

このときの落下により巻真を抜いた状態の機械がどれだけ不安定な状態にあるのか思い知らされました。

テーブルに落ちた衝撃で、中のツヅミ車が暴れてしまったようで時刻合わせやカレンダーの送りがままならない状態になってしまったのです。

このとき時計の仕組みも良く知らないまま日の裏分解を体験し、それにたどり着くまで自動巻き輪列受と角穴車も外したのですが、当然角穴車の角の意味も知らないので角穴がホゾにフィットしないままネジを締め込んだのが原因と推測できます。

自動巻の輪列ごと組み直し

素人的に考えれば原因である歯車のネジを緩めて、ホゾ穴を合わせ直してから丁寧に締めつければ良いわけですが、この単純な手順だと丸穴車と合わせて両歯車を(関連する他のパーツも?)痛める原因になりそうです。

自動巻き輪列受を外したNH35A

というわけで、巻き上げに係る輪列の受をはずして2番伝え車を取り外してから修正することにします。

ちなみに、問題の角穴車を外すには主ゼンマイに貯えられた動力を解放してやる必要があります。

NH35Aでメインの駆動系パーツを分解【趣味で楽しむ時計オーバーホール】

NH35Aの角穴車

穴は四角ではないが円を平らに狭めた部分が2か所ある

NH35の角穴車は肉眼で見るとほぼ丸い穴なので位置関係が分かりにくいです。これは7S26から受け継いでいる特徴で4Rや6Rでも同じ形状です。

余談ですが、機械部品に対して「ほぞ」という用語を使うのに未だに違和感を感じるのは私だけでしょうか。気持ちが若いせいか中身も何時までもビギナーでいれそうなそうな自信だけはあります。

角穴と香箱芯の取り付け位置を合わせる

角穴車を押さえる

水平の状態を保ったままネジを締める

NH35だと四角ではありませんが、歯車の穴と香箱車の軸を形状通りに合わせ直しピンセットで押さえながらネジを締め直しました。

へたに指なんかで押さえるより、歯車を水平を保った状態のまま丁寧に締め込むといった感じでしょうか。

輪列受を元に戻した状態

だらしない油のさし方ですが、この辺はあまり精度に影響ないかなと考えています。

受けを戻した状態で試しに竜頭を回転させてみると、今度は負担がかかる感触がなく改善されました。

ローターを元に戻したNH35

後は元通りにしてローターを付ければ出来上がりです。

もともと、手巻きはしないほうが良い自動巻きですが不具合が解消されたことでほっとしているところです。

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