趣味で時計のオーバーホールを楽しむのにネックとなるのが部品調達の難しさです。客に純正部品を販売してくれる時計屋さんは多くありません。
パーツそのものが素人には入手し難いのに加え、その価格が部品確保のハードルを更に上げてくれます。
何度試しても上達しない6R15のオーバーホール
少し前にムーブメント組み立ての際のテンプの入れ方について記事にしましたが、そこに書いたとおり6R15のヒゲゼンマイはとても良く絡みます。
自分の腕が悪いだけだとは思いますが、ヒゲゼンマイを少し変形させただけで、その代償は小さなパーツとしては驚くほどの価格で降りかかってきます。
素材が特殊なので仕方がありませんが、1個あたりが和食の店で「うなぎ」が食べれそうなほど。
上手く動作するまでは、何度も組み立て直すことになりますが、自分このままやってて6R15の機械を何個壊してしまうのかと考えると気持ちが沈みます。
それでも自分の好きな時計は自分で手入れをしたい気持ちは変わりません。
そこで気になったのが、6R15の特徴の一つが50時間のパワーリザーブと他の普及ムーブメントより日差が少ない点です。
自分の使い方だと50時間のパワーリザーブは必要ないし、精度も4R35並でも気になりません。
それ以上に拘りたいのが自分でメンテナンスをしたという達成感です。
使うのはNH35のテンプと香箱車
時計いじりを初めてから、6R15の他に7S26、NH35を一通り分解しました。
6R15Cに使われているヒゲゼンマイとバレル(香箱車)を4R35の物へ交換すれば、4R35並にスペックダウンした6R15ができあがるはず。(交換が可能であればの話)
そのできあがったロースペックな6R15は、そこそこパーツの入手性が良いということ。
※残念ながら今回の試験ではその後も安定した動作は確認できていません。
誤解のない程度に説明すれば、6R15のパーツだけが入手しづらいわけではなく4R35のパーツはNH35を分解すれば簡単に手にはいります。
そのうちNH35の地板だけ余りそうですが。
趣味で時計のメンテナンスをやる方には既知の事実と思われますが、時計のパーツは劣化したパーツを何種類か揃えるより、機械を1個買ってしまったほうが安くつく場合があります。
この手法で精度が出せれば自分で手入れをした6R15機を長く愛用し続けることができそうですが、その後の経過は良好とは言い難くなかなか実用の域に至っていません。
パーツ交換の実施
画像はNH35から取り出した香箱車。
中を見てみると、それほど使い込んだ機械ではないのに油が乾いています。
こんなものなのかも知れませんが、4R35として時計に入っている物はもう少し違うのではといった疑問もあります。
ここでは、家にあった時計専用ではないモリブデングリスを使いました。(趣味で行う作業なので・・)
分かりやすいようにNH35のほうへ3と書き込んでいます。
画像の6R15Cには先にNH35のテンプ一式が取り付けられています。またおかしな手順で作業していますが、香箱車の交換だけですのでこのまま組んでしまいます。
6R15CにNH35の香箱車が入った状態。
組み上がった状態を確認すると、ゼンマイは普通に巻き上げが可能でサイズ的には入る模様。なお、今回は6R15Cを使いましたがAやBでは香箱周りのパーツや地板の形状が異なるかも知れません。
完成したスペックダウン版の6R15をタイムグラファーにかけてみると姿勢差があるものの時計としては動きます。
ここで当然、姿勢差を解消したくなりますが、元から使っているパーツのどれが消耗が激しいのか、そもそも素人が判別できない石の傷みの有無などまで追求するには輪列のパーツをゴッソリ交換する必要がありそうです。
その辺を気にし続けても肝心の仕上がった機械を時計に組み込めないので、いったん割り切ることにします。
そんなわけで、今回の6R15Cのスペックダウンは4R35同様の動作が可能とまでは断定できていません(NH35への載せ替えが難しくも無難)。
現在メーカーが発表している新しいモデルを見ればSEIKOは6R15をよりロングパワーリザーブ化した6R35などに注力しているのが分かります。
こうした事情からも6R15の部品の入手性はますます困難になることも考えられ、自分が気に入った時計を長く使いたいなら6R15の性能に頑なに拘り続ける必要もなさそうです。
時計好きにとって部品が簡単に手に入ることは意外に重要なことではないでしょうか。
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