自動巻きの機械式時計は手で巻かない方が良いという話をよく耳にします。
このことは、メーカーが製品に添付する取扱説明書にも丁寧に解説されていて、時計を大切に使いたいなら手巻きの機能は備わっていても多用しないほうが良いのは間違いなさそうです。
使っていけない機能がある訳
では、使わない方がよい手巻きの機能をあえて付加しているのは何故かと言えば、しばらく放置した時計を使いたいときに、いちいち時計を振るアクションを起こすのでは、自動巻き時計は不便な物でしかないからというのが大方の理由でしょう。
「そうかい、一度止めてしまったのか、仕方がないから手巻きしな。」
ってなことですね。
製造者が正式に出している情報から理解できるのは、ほんのこれだけの事実です。
自動巻きの機械というのは極デリケートに出来ているのですね。
手巻きをしたいときはどうする?
以前に見かけた動画で、手巻きを回避するためとか言って思い切り時計を振っている方がいましたが、動力機構には良くても精度には悪影響しそうでした。
時間に余裕がないときなどは、振るよりも手巻きしてしまったほうが効率がよいです。
もちろん、手巻きを多用した場合は機械の寿命が早く来ることを覚悟しなければなりません。
使用中に突然ゼンマイが巻かれなくなることの心づもりも必要でしょう。
そのことを承知で、こまめに時計をオーバーホールに出すような使い方なら、たまに手巻きすることくらい良いのではないでしょうか。
もちろん、一生使い続けたいとか特別な思い入れがある時計なら手巻きは避けておくべきです。
定説についての例外的な考え
以前にも、ここで書いていますが複数の自動巻き時計を所有している場合、それらを使い始める度に手巻きしたくらいで機械が壊れるかと言ったら少々疑問に感じます。
自分の場合も、何本か自動巻きの時計を持っていますが、使い始めに手巻きをしたところで、それが原因で機械を壊すこと自体が大変だと思っています。
手巻き機能を使って、ゼンマイを巻き上げたときに負担がかかりすぎてしまうのは自動巻きに使われる部分のパーツ。
そして、手巻きを全くしなくても経年により機械の磨耗が激しくなるのも自動巻き周りの部品です。
勿論、使えば使っただけ他の部分の損耗によっても故障は発生しますが、自動巻きを続ければ手巻きを使おうが使うまいが自動巻きに係る機械部品の寿命が進み、手巻きを使ったときは更に自動巻き部分が消耗しますよということでしょう。
少々、過激な話をすれば手巻きで壊れるのは自動巻き機構なので、壊れる部分は分かっているし修理に必要な部品も特定可能。
手巻きの多用が原因で故障した場合でも、自動巻きが効かないだけで手巻きでしばらく使える可能性がある。
けれど、手巻きで壊れる部品が特定可能であっても、そのことをハイハイと受け入れてその部分だけ修理してくれる「お人好しの時計屋さん」なんてのも見つけるのは困難でしょう。
時計屋さんのスタンスとしては全てバラして分解洗浄が基本でしょうから、主張の強いお客さんを相手にしていても良いことありません。
分かっちゃいるけど手で巻きたい
手で巻きすぎたら壊れると言われても、我慢できずに手巻きをしてしまうのは単に時計に手巻き機能が付いているから。
もっと言うと、手巻きを乱用したから実際に時計が壊れたという話を聞いたことがないからです。
1本だけ愛用している自動巻き時計は、そもそも手巻きの必要がなく、複数持っている時計好きが2本交互にってこともなく数はそれ以上に所有しているでしょう。
私も、人にはお勧めしませんが、仕事で身につけている普段使いの自動巻きは休日に存分に手巻きしてしまおうと考えています。
もし、それが原因で故障が発生すれば、どの程度の間隔で手巻きし続ければ故障に至る可能性が高いかを実感できるでしょう。
そのとき、修理が面倒だったらロングパワーリザーブを備えた1本を買い足しても良いかと考えています。
時計は壊れても、付いている機能を遠慮せず使った結果が分かれば、痒いところに手が届いたような収穫はありそうです。
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