NH35ムーブメントのテンプ一式をテンプ受にセットする

メンテナンス

時計のメンテナンス目的で、うっかりヒゲゼンマイを歪ませてしまったらテンプ一式を交換してしまったほうが楽に直せそうです。

ですが、実際にテンプをテンプ受に組み込もうとすると結構な難しさなのが分かります。

テンプ一式とテンプ受の組み立て方に関する一般的な情報は限られていて、補足すべきテクニックを欠いている既知の情報だけを参考にした場合に必要な資材と手順は次のとおりになります。

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テンプ受へ組み込みに揃えたパーツ

使用するパーツと7S26の地板

テンプ一式をセットするために揃えたのは、テンプ一式とテンプ受と地板です。

なお、画像のテンプ一式(透明ケースに入ったもの)はストックしていた中古品、地板は7S26用を使用。テンプがNH35なのでNH35の地板が最も適していますが、ここでは手持ちの7S26Aのもので代用しています。

石を抜いた7S26の地板

作業にあたって天真が確実に入ったのがチェックしやすいよう地板にある石は抜いています。

NH35A用のテンプ受

新品のテンプ受にも石とヒゲ持ちがありますが、これらも取り外して保管しておきます。

石を抜いたテンプ受

ヒゲ持ちをセットするレバー(ヒゲ持ち受)はヒゲ棒が入っている緩急針のレバーに対して90度程度(直角よりやや狭い?)に傾けプレート側に寄せています。

作業の手順

繰り返しますが、ここでの作業を正しく行うには何かしらの専用工具やテクニックが補足されるべきで一般に通用するほど簡単なものではありません。

てんぷ一式を地板にセット

最初に「テンプ一式」を地板にセットします。石を外した状態なら割と簡単に置くことができるはずです。

テンプ受を地板にセット

ヒゲ持ちをレバー(ヒゲ持ち受)の先端に合わせて置きます。このときヒゲはヒゲ棒の外側を通るようにします。

ヒゲはヒゲ棒の外側を通しておく

続いてテンプ受をセットして、天真が間違いなく穴に入っているかズレがないか確認しながらネジを締めます。

ヒゲ持ちを受に押し込む

この2点の配置ポイントが正しいことを確認できたら、ヒゲ持ちをピンセットで押し込みます。このときの力が入りすぎると失敗しやすいので加減が必要です。

なお、この部分はテクニカルガイドでは「コシの強いピンセットで」と表記しています。

テンプ受にヒゲ持ちがセットされた状態

ヒゲ持ちをレバーの定位置にセットできたら、ヒゲ棒の外側に取り回していたヒゲ(外端ひげ部)をヒゲ棒の間にセットします。

このヒゲ棒の間にヒゲを通す作業が地板に載せたままだと作業性がよくありませんが、かといってヒゲ棒に通さないまま地板から外して作業しようとすると向きを反転させるときヒゲに歪みが生じやすくなります。

ヒゲゼンマイをヒゲ棒にセットする

無事にヒゲ棒の間にヒゲを移動できれば組立は無事完了といういことになりますが、この辺は、すでに歪みがある中古パーツを使い繰り返し練習して最適な方法を見つけるしかなさそうです。

ここで行った工程で明確に分かる注意点は2点、一つはヒゲ持ちをレバーに押し込むには「腰の強いピンセット」が必要であること。

もう一つは、地板にセットしたままでヒゲ棒にヒゲを通すことが可能か、あるいは外さなければヒゲが歪むのか検証がしなければならないことです。

ピンセットについては、わざわざ「腰が強い・・」と表記しているので、普通のピンセットでは弱くて押せないと解釈でき、腰の強いピンセットとはどんなものかを選定しなければならないことでしょう。

また、ヒゲ棒間へヒゲをセットする作業は練習を繰り返すしかなさそうです。

このように一般向けには技術的な情報が足りず課題の残る内容ですが、取り扱いの不備により修復できないほどヒゲゼンマイを絡ませてしまった場合などには初級者(知識の少ない時計ファン)ほど解決しておきたい、修得しておきたい避けて通れないテクニックであるのは確かです。

4R35や6R15でも、テンプ一式は正規に供給されている部品なのでやり方が正しければ普通に交換できるはず。

必要な技術的な情報が少ないというのは、「これ普通には出来ないしアレだね」と避けられている部分なのかもしれません。またはヒゲそのものをピンセットで修正できれば新品との交換自体が要らない作業とも解せます。

それでも、このアレな課題をクリアできれば「時計いじり」の難易度は下がるし成功体験を数多く積むカギとなる部分の一つと考えています。

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