もっと知りたいNH35の針周り仕様【使えそうなケースや装着可能な針】

アナログ腕時計

NH35がどんな機械なのか実際にNH35を使ったことがある人ならお分かりと思います。

これから使おうとしている方も4R35の同等品であることは知っているでしょうし、7S26などの代わりにも使えることだけ分かっていればだいたいは事足りるでしょう。

ただし、何度か使い込んでいくと4R35とほぼ同等品というのは具体的にどの部分を指すのか気になってきます。そこでNH35で4R35用とされる純正や社外品などのケースや針を使う際に4R35(その他7S系)とどの部分が同じで、どの部分が異なっているのか、目的をケースの奥行と針に関係するパーツに的を絞り調べてみることにしました。

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NH35のサイズには2種類ある

まずWeb上で確認できる範囲によればNH35には針の取付け高さによって2種類のサイズがあって、一般的に出回っているの並な(低い)サイズの他に文字盤から高い位置に針を取付けできるものが存在するということが分かります。

識別番号の書かれた場所

赤丸で囲んだ部分に識別用の数字がある

サイズの判別はムーブメントにある刻印を確認することで可能で数字の「3」が書かれていればノーマルなサイズ、「4」が書かれていれば針の取り付け高さが高い特別なサイズということになります。

時計店以外で一般に購入可能なものは、ほぼほぼこの識別記号が3のレギュラー仕様(仮称)のNH35と判断し、ここではレギュラー仕様のものを対象に主要パーツのサイズなどを調べてみることにします

3の数字が見える

画像のNH35では「3」の数字が確認できるので一般的な針の取り付け高さのものであると分かります。

Web上のデータから分かるNH35Aムーブメントの厚さ(秒針取付け部の先端まで含めた)は約7.59mm。針の位置が高いものはこれより0.4mm厚い約7.99mmになります。

まずは、この本体の高さ(厚み)について実物を使い測定してみることにします。

測定には国内メーカーのマイクロメータを使用。計測用に用いたのはTMI製としてネットで入手可能なNH35Aです。

NH35の高さ

測定方法は、機械のスペーサー部分をバイスで軽く挟んで立てた状態で行っています。

この手法で測定できたNH35の高さは7.55mm。公開されているデータより約0.04mm(0.037mm)短いですが、これはローターを含めた各ネジの締め付け具合や測定時の室温も影響しているかと考えます。

また、使用したマイクロメータでは測定時に定圧装置による一定のトルクがかかる仕組みになっているので計り方の問題かもしれません。

NH35ではこの先端に厚さ0.1mmの秒針が付いた状態でケースの風防との間に0.45mmのスペース(空間的な余裕)ができることを想定しているようです。

これも、秒針の作り(または押す力)によって取り付ける穴のどの位置まで押し込まれるかで誤差は出ると思われます。

NH35A 4R35B
7.55mm 7.16mm

参考までに同じ条件で測定した4R35B(完成品の時計から取り外し)と比べてみるとNH35Aのほうが高さがある(約0.39mmの差)のが分かります。

この4R35BではNH35Aで調べた識別番号と同じ場所に「2」の記載がありましたが、この識別番号の意味が詳しく分からないのとダイバーズなどでは更に仕様が違っているとも考えられるので単純に比較はできないデータになります。

文字盤側に出ている軸の高さ

3針の取り付け部分

NH35の機械本体の高さについて分かったところですが、3本の針を取り付ける歯車の軸の高さについてもネット上からデータの取得は可能です。

ただし、4R35や7S26などと比べどの部分に互換性があるのかは個々のパーツごとに取り出してサイズを調べたほうが理解しやすいと考えます。

そこで、未使用のNH35を分解して主要パーツでそれぞれ軸の高さ(長さ)を計ってみることにしました。

筒車の高さ

まず最初に調べてみたのは時針(短針)を取り付ける筒車で測定値は2.13mm。

筒かなの高さ

つづいて分針(長針)が付く「筒かな」の高さを計ってみると2.84mm。

4番車の高さ

秒針が取り付けられる4番車の測定値は6.25mmという結果になりました。

実測によって、おおよその高さが分かったこれら3つの歯車にはテクニカルガイドから読みとれる特徴があります。

それぞれの資料によれば、NH35Aの筒車は4R35Bと同じ部品番号で、これはロゴがSIIでもTMIになっているものでもNH35Aでは同じです。

筒かな(分針の軸)は筒車(時針の軸)とは対照的に機械によって別な物が使われていることがわかります。

それと最も興味深いのは、NH35Aだけ他の同世代7S系ムーブメントで唯一4番車の部品番号が違うことを確認できます。

4R35Bで測定した値と並べて比較すると次のようになります。

パーツ NH35A 4R35B
筒車 2.13mm 2.12mm
筒かな 2.84mm 2.72mm
4番車 6.25mm 5.89mm

これらの数値からわかるのは、この比較用に用いた4R35Bに限っては分針と秒針を低く、3針それぞれのクリアランスは狭く抑えられているものであると分かります。

4R35BにもNH35Aと同じ場所に識別番号があって、この個体では「2」と書かれていました。これがNH35と同じくレギュラーなサイズなことを意味するのか、それとも一般より高さが低く抑えられたものなのかは情報が確認できません。

手元にある6R15C、6R15D、NE15Cではどれも「2」の記載があり6R15Aでは数字が書いてありません。ついでにSBDY007ダイバーズの裏蓋を開けてみても4R35Bには「2」の記載があるので、サンプルに使った4R35Bにある「2」の記載が特に針高が低いものを意味するとは考えにくいです。

なお、4番車は4R35Bと7S26C、6R15Cの3つで部品番号に共通性が確認できますがNH35Aは別物。NH35A以外のものが製品ごとでも同じかどうか分かりませんが手元にある7S26Cから取り出した4番車では5.87mmと4R35Bの5.89mmに近いサイズなのを確認できています。

話をNH35Aに絞りなおすと、今回の4R35Bとの比較では共通の針を使った場合なら針同士の奥行にクリアランスが確保できるNH35Aは針と針が干渉しにくく取り付けやすいと考えられます。

針を取り付ける部分の太さ

ここまででNH35本体の高さや、ケースに入れたときに文字盤と風防との間にどれくらいの領域の確保が必要なのか、ある程度イメージができる数値的な材料が得られたと思います。

これらに加え、NH35を使用するにあたって知りたいのは使用する時針、分針、秒針にある取付穴に要求されているサイズです。

4R35の同等品ということは針の取付け部、つまり関連する歯車の先端の太さが4R35とほぼ同じサイズだということは漠然と理解できますが、実際の数値的なサイズはどれほどなのかも実物を測り調べてみることにしました。

筒車の直径

これについても筒車から順に測定してみます。文字盤から突き出る部分にマイクロメータの測定面を当ててみると1.51mm(1.509あたり)。

筒かな先端の直径

「筒かな」の先端側の径は0.89mm。

4番車先端の直径

秒針が付く4番車の先端は0.21mmでした。

この文字盤上で針が取り付けられる3本の軸の径については、Web上にある参考資料(データシート)の数値と比較しても差が0.01mm未満でした。

また、その参考資料ではそれぞれの軸(ほぞ)に適合する針の穴のサイズが記されているので、ここでは1/100mm単位に丸める(0.01mm未満を四捨五入する)形式で実測値と並べて表にしてみます。

パーツ 軸先端の径 針の穴
筒車 1.51mm 1.50mm
筒かな 0.89mm 0.88mm
4番車 0.21mm 0.20mm

これらの数値を踏まえると針に設けられた取り付け穴のサイズは、それぞれの歯車の径より微妙に小さいものであることを想定していると考えられます。

ちなみに軸の径についてもサンプルの4R35Bで測定し比べてみると次の通りになります。

パーツ NH35A 4R35B
筒車 1.51mm 1.51mm
筒かな 0.89mm 0.89mm
4番車 0.21mm 0.21mm

太さのほうは長さと違って4R35や他のムーブメントと互換性が高そうです。

趣味で時計を組み立てる際に、秒針は薄くできていて破損させやすいのと、自分の好みの秒針に付け替えたいときに針の取り付け穴などの仕様はとても気になる部分です。

上の表にまとめた数値では、NH35ムーブメント用には穴のサイズが0.20mmの針を選べば良いと判断しがちですが、それでも実際に0.20mmとして販売されているものを着けてみるとSEIKOの純正品よりサイズが小さい(狭い)ように感じることがあります。

この辺の実寸や設計上の数値が分かったところで、物が社外品であればパーツを作るメーカーの工作精度や表面処理にも係わってくるので使う針の良否を判断するのはやはり簡単ではありません。

それでも、ネット上でNH35(36)用として3針のセットで販売されている針などは、今回の測定値よりも信頼できるデータに基づいて作成されていることでしょう。

それらのパーツを利用したり、ムーブメントを交換する際には針が風防や文字盤のインデックスに干渉しないかどうかは気になる部分です。

今回は、NH35を使う際に知っておきたい針の取り付け部分にポイントを絞って調べてみました。

ここで取り上げたデータは完全なものではなく利用も趣味の範囲にとどまりますが、より正確なデータを知るためのヒントにはなるのではと思います。

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